地区：石川県白山市 区間：加賀一の宮〜白山下／16.8km 軌間：1067mm／単線 動力：蒸気→内燃→電気
金沢と名古屋を結ぶ壮大な構想を元に始動した鉄道、金名鉄道。計画は白山連邦に阻まれ潰えたが、その想いは国鉄バスの路線に引継がれ、桜の植樹など今でも時折話題となっている。社は第二次世界大戦中、北陸鉄道に合同し同社の金名線となったが、昭和終期に橋梁の強度低下が判明し、そのまま終焉を迎えた。廃止の原因ともなった手取川に沿って走り、沿線には渓谷や滝など見所も多い。
路線図
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略史
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| 大正 |
15(1926) - |
2/ |
1 |
金名鉄道 |
開業 |
| 昭和 |
2(1927) - |
12/ |
28 |
〃 鶴来〜白山下 |
全通 |
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4(1929) - |
3/ |
11 |
鶴来〜加賀一の宮を金沢電気軌道に譲渡 |
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18(1943) - |
11/ |
25 |
北陸鉄道に合同、金名線となる |
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59(1984) - |
12/ |
12 |
〃 金名線 |
休止 |
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62(1987) - |
4/ |
29 |
〃 〃 |
廃止 |
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廃線跡現況
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A |
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金名線の出発点となる加賀一の宮(写真A)。路線廃止に伴い直通する石川線の終点を担った時期もあるが、今は同線も鶴来までに短縮され、役目を終えた駅跡は当時の姿を保ちつつ、バス停の休憩所に利用される。 |
| 19年09月 |
| ここからの線路跡は自転車道に転換され、手取キャニオンロードの名が付けられた。道なりにしばらく南下すると、やがて国道157号線バイパス下をくぐり(写真B)、この道路に沿って走ることになる。 |
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B |
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94年10月
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C |
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途中には宅地開発のため、自転車道と線路跡が一致しない区間がある。両者が再び重なるのは白山大谷川(写真C)からで、以前は鉄道時代のガーダー橋を望めたが、道路化に伴って既に架け替えが済んでいる。 |
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94年10月
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| この先で国道に一旦合流し西側の歩道を兼務したのち、右に急カーブを切って道路から離れると、すぐ手取中島(写真D)に着く。駅跡としてはなんとも狭小な用地が残されている。 |
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D |
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94年10月
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E |
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駅の西で渡る手取川は全国有数の急流川でもあり、それまでの穏やかな廃線跡風景と比べて、その表情は驚くほど険しい。当時の左岸橋台(写真E)の強度低下が、路線の廃止を決定したといわれている。現在は金沢市内で不要となった道路橋を改修して架橋し、キャニオンロードの一端を担っている。 |
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94年10月
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対岸の左急カーブ終了地点に位置したのが広瀬(写真F)となる。19年時点では大半が新設県道の下敷きとなり、ホーム脇の樹木がその位置を示すのみだ。なお旧版地形図は0.1km程南方に駅を描くため、機関庫や側線を抱えていた初期時代から移設したとも考えられるが、単なる誤差なのかもしれない。
いずれにしろ、手取川を挟んで短い区間にふたつの駅が配置されていたことは間違いない。 |
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F |
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94年10月
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G |
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川の左岸に移った金名線は県道44号に平行して南西方向に向い(写真G)、自転車道への転用前は農道として活用されていた。 |
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94年10月
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| 一旦距離を置いた県道が再び接近した直後、両者の間が瀬木野休憩所として利用され、ベンチ等が置かれる。同所に瀬木野の駅名標を模した案内看板も立てられるが、ここに駅のあった記録はない。本来の瀬木野(写真H)は西方の集落に近い場所に設けられ、同名バス停が目印となる。 |
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H |
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| 19年09月 |
服部(写真I)は島式ホームを持ち陶石の積込施設も備えた大きな駅だが、道路脇に広がる構内は藪地というより独立した雑木帯に占有されてしまった。当然ながら当時の痕跡を見つけることは難しい。
二代目加賀河合(写真J)の北側では以前水路跡を確認できたが、道路化に伴って消滅している。現地では、ホームが南側にあったとの話を聞くことができた。
初代加賀河合(写真K)は精度にやや不安のある昭和5年版地形図を元に探したが、それらしきアクセス路さえ発見できず、やむなく、おおよその位置を把握するにとどまる。その後、緩やかな左カーブを抜けると県道44号線に合流し(写真L)、自転車道は北側の歩道を兼務する。
地名ではなく、近くを流れる川にちなんだ駅名と思われる大日川(写真M)。一時は近くの河合鉱山で採掘する陶石の積込が行われ、鉄道運行時からあったホッパーはいまだに健在。瀬木野と同様の駅名標も立てられる。
駅を出ると県道44号線から別れ、大日川を渡る。ここに架けられていたのが大日川橋梁(写真N)。廃止後しばらくはプレートガーダーが当時の姿で残っていたが、今は線路跡を拡幅転用した「てどり桜街道」として、二車線の道路橋に架替えられた。
下野(写真O)は下野町の集落脇、現在の下野集会所付近にあった。以前、未舗装の農道として利用されていた鉄道用地は、やはり桜街道の一部に組込まれている。なお手取キャニオンロードは道路の東端を占有し、歩道を兼務する。
手取温泉(写真P)も大きく変貌し、駅名の元となった温泉は現在バードハミング鳥越と名が変わっている。駅の東方に開設した遊園地のおかげで、大混雑した時期もあったようだ。駅名も当初の上野から手取遊園に変更し、閉園によってさらに手取温泉へと変遷をたどることになる。その遊園地の一部がいまだに残っていると、地元で耳にした。
駅を出て緩やかな左カーブを終えると、鉄道側は道路からいったん西に分離する(写真Q)。
未舗装道路となった跡地を進むと、すぐ釜清水(写真R)に到着する。主要駅として三本の線路を持った広い構内は空き地となり、当時の雰囲気をかすかに残している。貨物ホームの北端に建っていた、木造と思われる農業倉庫一棟が、19年時点でも健在だ。
駅の先でキャニオンロードが再び線路跡に戻り、今度は単独の自転車道として南に向かう。整備前は踏切跡(写真S)も見られたが、今では交差道路側もルートが変更され、完全に抹消されてしまった。
道なりに進み次の下吉谷(写真T)を過ぎると、手取渓谷の名所綿ヶ滝の脇を通り抜ける。名所といっても、みやげ物店もないような場所だが、付近の景色からは想像できない厳しい景観が特徴で、探索の息抜きに立寄るには最適。全体を見渡せる展望台もあるが、すこし乱暴なつくりの急な階段で川底に下りると、その落差を一層楽しむことが出来る。
この先にも小さなガーダー橋(写真U)等の遺構を各所で確認できたが、自転車道への転換により全滅状態だ。
続いて手取川左岸の集落に合わせて西佐良(写真V)、三ツ屋野(写真W)と二駅が順に設置されていた。前者は廃止後の道路整備に一部が取り込まれ、後者にはバス待合所が設置されていたものの、既に撤去されている。
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V |
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W |
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| 19年09月 |
94年10月
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終点の白山下(写真X)はその用地を利用してバスターミナルとなっていたが、自転車道の整備と共に規模を縮小した。廃線後も長く活用されていた当時の駅舎(写真Y)は、近年新たな建屋に置き換えられ、サイクルステーション白山下駅として再生が図られている。
地元の方には失礼だが駅跡に立って周りを見回すと、よくぞここまで旅客鉄道が延びてきたものだと感心してしまう。沿線に大きな集落や観光地があるわけでもなし、ましてや最終目的地の名古屋は影もかたちも見えない遙か彼方だ。貨物輸送が敷設の目的だったとしても、その路線が昭和の終盤まで残っていたのは、まさに驚きとしか表現のしようがない。
参考資料
- 白山麓を走った鉄道／飴野 一郎 編／鳥越村教育委員会
参考地形図
| 1/50000 |
 鶴来 |
[S5修正/S50修正] |
白峰 |
[S50修正] |
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| 1/25000 |
鶴来 |
[S48修正] |
口直海 |
[S58修正] |
別宮 |
[S58修正] |
市原 |
[S55修正] |
最終更新2024-10/19 *路線図は国土地理院電子地図に追記して作成*
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