地区:北海道釧路市 区間:穏禰平~仁々志別/12.2km 軌間:762mm/単線 動力:馬力
北海道には開拓民の生活を支えるため、殖民軌道と呼ばれる簡易軌道が道内各地につくられた。中でも道路の未整備な道東に数多く、仁々志別線もその一つに数えられる。主な貨物は木炭等の林産物とされているが、多少の農産物出荷もあったと思われる。なお開業時の馬による牽引から、内燃機関への昇格を果たした路線もあるが、当線は最後まで馬力に頼っていた。
路線図
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略史
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昭和 |
12(1937) - |
9/ |
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仁々志別線 |
開業 |
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39(1964) - |
12/ |
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〃 |
廃止 |
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廃線跡現況
仁々志別線の起点山花(写真A)は当初穏祢平と称し、雄別炭砿鉄道との接続駅でもあった。両路線ともに消え去った今、駅跡には大きな空き地が広がり、自転車道の休憩所らしき東屋がその一角を占める。しかし、近くに各種集客施設を備えた山花公園が開設された影響もあってか、人影は全く見当たらない。
商店も一軒あるが、店先に自販機を並べたままシャッターを閉じている。
昭和3年の地形図には、雄別炭砿線の南側から東に向かう別の軌道が描かれるが、この鉄道名、目的、動力等はわからず、今のところ正体不明路線と呼ぶほかない。
店舗前の舗装路を東に進むと、ゆるやかな左カーブ(写真B)を描く。地図上の線形とも一致するため、この道を線路跡と判断した。
カーブ途中で道道にぶつかり、その先は建設会社の資材置き場に入る。ここで北に向きを変えると、続く農地の中に当時の路盤(写真C)が姿を見せはじめる。
だがこれもすぐ荒地に変わり、道道666号線の東脇を併走するルートは、目視での確認が難しくなる。
しばらくすると、電話線(写真D)が道路脇に並び始める。線路跡に送電線を設ける事例は各地で散見され、ここも軌道跡を示している可能性がある。とはいえ土地に余裕のある北海道のこと、その可能性は他地域よりかなり低いと言わざるを得ない。
一縷の望みを託す電話線も殖民区画の18線で終了し、その先は完全にお手上げ状態となってしまう。
続く19線の北で旧道が左に分離し、軌道もその東脇に移る。しかし直後に右カーブで旧道と別れ、そのまま道道とも交差したのち、牧草地に飛び込んでしまう。途中で横切る旧仁々志別川(写真E)は両岸とも雑木に覆われ、橋梁痕は見いだせない。道路付け替えに伴って、河道が変わった可能性もある。
東を流れる現仁々志別川は軌道廃止後に整備された河川で、当然ながら橋梁が建設されることはなかった。
その新河川を越えると再び道道と交差し、今度はその西脇を併走することになる。
21線に置かれていた繁岡(写真F)は線路位置すら特定できず、小さな T字交差点付近と推測するのみだ。駅名に該当する地名がないことから、近隣居住者の個人名を用いたのかもしれない。
北上を続ける軌道は、駅の先で道道との距離を少しずつ離し、そのまま雑木林の中に入り込んでしまう。一部に牧草地も織り交ざるが、共に路盤を確認することはできない。
さらに北海道では珍しい養豚場の西側を通り抜けた後、再び道道に接近して鋭角に交差する。手前の未舗装路(写真G)がルートに一致するものの、確証は得られない。
道道243号線との交差付近に置かれていたと思われる住吉(写真H)。ここも跡地を特定するような痕跡は見いだせず、民家が数軒あるため軒並み声をかけてみたが、残念ながら応答はなかった。
ここからは道道666号線の東隣を併走する。相変わらず雑木や背の高い雑草に遮られ、正確な位置の把握は難しい。途中の牧場で聞いたところ、道路脇に続く掘割状の小さな溝の東側が、線路跡(写真I)と教えてもらった。道路端からは7-8m離れている。
31線を過ぎ二つの左カーブを曲がると、再び両者の位置関係が逆転し、軌道は道路の西側に移る。と、雑木林の中に築堤(写真J)が姿を見せはじめる。
現地で教示は得られなかったが、直線状に続くことからこれを線路跡と判断した。
築堤はやがて、農協の倉庫に突き当たり終了する。以前は事務棟もあったようだが、18年時点では何の表示もない倉庫が一棟、ポツンとたたずむのみだ。ここが終点の仁々志別(写真K)となる。
かつては地区の中心として学校も擁していたが、今は簡易郵便局と多目的センターがその流れを受け継いでいる。
参考地形図
1/50000 |
阿寒 |
[S34資修] |
大楽毛 |
[S36修正] |
徹別 |
[S30測量] |
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1/25000 |
阿寒 |
[S33測量] |
大楽毛 |
[S33測量] |
山花 |
[S33測量] |
徹別 |
[S34測量] |
下幌路 |
[S33測量] |
最終更新日2023-3/14 *路線図は国土地理院地図に追記して作成*
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