地区:広島県福山市 区間:両備福山~府中町/22.1km 軌間:762mm/単線 動力:蒸気→電気
福塩線の前身となった両備軽便鉄道。国有化後に改軌され、同時に両端部のルートも変更された。また神辺からの支線は国有化から取り残され、神高鉄道、井笠鉄道へと順に譲渡された後、今は第三セクターの井原鉄道が線路敷の大半を転用して運行されている。
略史
大正 |
3(1914) - |
7/ |
21 |
両備軽便鉄道 |
開業 |
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15(1926) - |
6/ |
26 |
両備鉄道に改称 |
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昭和 |
8(1933) - |
9/ |
1 |
国有化 福塩線となる |
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10(1935) - |
12/ |
14 |
旧両備鉄道区間、1067㎜に改軌、一部新線に移行 |
路線図
廃線跡現況
福山駅北側は一帯を福山城が占めるため、両備軽便鉄道も用地の確保には苦労したようで、最終的に城の外堀を埋めて両備福山(写真A)が設けられた。蒸気動力の起点駅として必要とされた大きな構内は、既にコンビニや駐車場等に分割して再開発されている。
北に向う路線は市街地の中に埋没し、跡地を直接たどることは難しい。その中に礎石といわれるコンクリート基礎(写真B)が残され、案内看板も掲げられている。用途は判然としないが、小さな水路でもあったのかもしれない。ちょうど右カーブの途中にあたる。
カーブ終了地点にはほんの少しだけ鉄道の境界線(写真C)が現れ、跡地は民家の車庫等に利用される。東に向いた路線はその後、蓮池川右岸に沿って走り、線路跡は堤防道路に転用される。次の胡町(写真D)もこの道路上に置かれていた。
駅の先は観光名所となる惣門番所を左手に仰ぎつつ進むが、道路はすぐ工場敷地に突き当たって終了してしまう。さらに東隣の寺院を抜けたのち蓮池川の対岸に渡り、再び住宅密集地に入り込む。その中に取り込まれた吉津(写真E)は跡地を探し出すにも苦労し、当然ながら鉄道の雰囲気を感じ取ることはできなかった。
その後、徐々に北へと向きを変え、やがて国道313号線に合流(写真F)する。ここからの国道は線路跡を拡幅転用して建設され、市道との交差箇所(写真G・H)では当時の石積橋台がそっくり再利用されている。
北上する国道は、蔵王山から連なる奈良津の丘陵を越えるため大きなS字カーブを描く。サミット付近(写真I)は深い切通として続くが、鉄道時代はトンネルが掘削されていた区間でもある。
下り坂に転じたのち、山陽道をくぐると道路はやや東に向きを振る。直進する鉄道側は国道と離れ、沿道の住宅地内に飛び込む。この一画に当時の石積橋台(写真J)が保存され、傍らには歴史を記した案内看板も立てられている。旧道の両側に橋梁が設けられていたようだが、今は片側の一基のみが現存する。
その後は痕跡を残さず北上し、やがて左手から接近する現福塩線(写真K)に吸収される。両線の合流地点に位置したのが横尾(写真L)となる。
以降は初期の軽便線を改軌、電化した区間に入り、府中まで同一ルートをたどる。途中駅に関しては、戸手が若干東に移動したのみで、他に大きな変更はない。また途中の小橋梁(写真M)は大半をコンクリート橋が占め、内部に石積橋台を確認できる箇所も少なくない。両備時代のガーダー橋が転化されたと考えられるものの、短い橋は外見からの判断が難しい場合もある。
次の神辺(写真N)から分岐する高屋への支線は、独自の経緯をたどったのち、今は後継路線となる井原鉄道が隣に駅を構える。
本線側は高屋川堤防を越えるための築堤が続き、嵩上げされた二箇所の橋梁(写真O・P)下部に、支線分と並んだ当時の石積橋台が顔をのぞかせている。
さらに現福塩線には、両備時代の石積橋台を内包した橋梁(写真Q・R・S・T・U・V・W・X・Y・Z・AA)が数多く使用される。大半はコンクリート化された小橋梁だが、一部にプレートガータ―橋も見られる。
府中駅の手前で左に曲がる福塩線と別れ(写真AB)、そのまま直進する軽便線。当時の市街地東端に初代府中町(写真AC)を設けていた。終端駅としての大きな構内は市域拡大に伴う新設道路に分断され、昔日の面影を呼び起こす光景はどこにも広がらない。
なお、駅は永井町交差点西側との話を現地で聞いたが、旧版地形図や大正、昭和初期の市街図から、交差点を越えることはなかったと判断した。今はただ、東西の市道北奥に、用地外縁に沿ったと思われる境界線が残されるのみだ。
参考資料
- 鉄道ファン通巻277号/国鉄狭軌軽便線/臼井茂信 著
参考地形図
参考地形図 |
1/50000 |
府中 |
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井原 |
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福山 |
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1/25000 |
府中 |
[T14修正] |
新市 |
[T14修正] |
神辺 |
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福山西部 |
[T14修正] |
制作公開日2024-4/17 *路線図は国土地理院電子地図に追記して作成*
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