地区：秋田県横手市 区間：横手～老方／38.2km 軌間：1067mm／単線 動力：蒸気→内燃
秋田県南部の主要都市、横手と湯沢から各々奥羽本線に接続する形で私鉄線が延びていた。二社は、第二次世界大戦時に他のバス会社等を含めて統合され、社名は羽後鉄道となった。戦後しばらくは小康状態を保っていたが、自動車の普及に伴い昭和40年代に2路線とも廃止され、今はバス運行を中心として発展している。なお横荘線は横手と日本海側の本荘を結ぶ目的で設立され、両都市からそれぞれ東線、西線として敷設していったが、西線は昭和12年に国有化され、東西線連絡の夢はこの時点で断たれた。
略史
| 大正 |
7(1918) - |
8/ |
18 |
横荘鉄道 |
開業 |
| 昭和 |
18(1943) - |
12/ |
5 |
〃 雄勝鉄道を合併 |
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19(1944) - |
5/ |
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羽後鉄道に社名変更 |
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27(1952) - |
2/ |
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羽後交通に社名変更 |
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46(1971) - |
7/ |
19 |
〃 横荘線 |
当日をもって廃止 |
路線図
廃線跡現況
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A |
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旧国鉄駅へ乗入れていた横手(写真A)。駅構内には当時のホームが残り、改札をくぐれば今でもその上に立つことができる。
南に出発した横荘線は奥羽本線としばらく並走した後、西へと別れる。長期にわたりレールが残されていた路盤は、既に荒れ地に変わってしまった。 |
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07年1月
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| 線路沿いに建つ北側の車庫(写真B)は撤去されたものの、同様の運命をたどると思われていた南側の機関庫(写真C)は、なぜか改修され、現在も同じ位置に建ち続けている。バス施設の加工場となったともいわれている。また機関庫の奥には、当時の橋台跡(写真D)を見つけることもできる。 |
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B |
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93年4月
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C |
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D |
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93年4月
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17年9月 |
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E |
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放置された路盤上は藪地と化し、奥羽本線との分岐点には入り込めないが、その先に橋桁を載せたままの小さな橋梁(写真E)が姿を現す。 |
| 17年9月 |
| 橋の先からはあぜ道となり、最初の十字路で舗装路に切り変わる。以前は路盤(写真F)がそのまま残されていた箇所だ。交差点南の小橋梁も道路化に伴って消滅し、鉄道の雰囲気は完全に消されてしまった。 |
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F |
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93年4月
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G |
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近年は道路沿いにごみ焼却場が新設され、出入り車輛に対応するため一部区間は二車線に拡幅されている。傍らに置かれた古い枕木(写真G)は、道路整備時に出土したものと思われる。 |
| 17年9月 |
焼却場を過ぎ一車線の未舗装路に戻った矢先、秋田道の横手ICに行く手を遮られる。そのほぼ真下を横荘線が通り抜けていた。
短命で郷土史にその名を連ねることの少ない栄村(写真H)は地形図に記載がなく、前後駅からの距離計測と当時の接続道路を考慮し、インター南の国道13号線バイパス側道付近と推測した。
駅の先、建機レンタル店の北を流れる水路に橋台らしきコンクリート構造物(写真I)を認めるが、雑草に邪魔されて全容を確認できず、鉄道の遺構である可能性は五分五分といったところか。レンタル店を抜けると一旦県道267号線に合流したのち、すぐ右に分岐(写真J)し、今度は二車線の農免農道(写真K)として利用され始める。
樋の口(写真L)付近では農道が圃場整備の区画に合わせて整備されたため、鉄道跡と若干のずれを生じる。稲荷神社の北付近にあった駅跡も既に農地に飲み込まれ、正確な位置の特定は難しい。なお駅の西を流れる吉田排水幹線は横荘線廃止後に開削され、当然ながら橋梁痕は存在しない。
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M |
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直線で続く道路が小さなS字カーブを描くと、再び道路と線路跡が一致する。
東浅舞(写真M)は信号のない交差点の東側に置かれ、結構長いホームがあったこと、無人駅であったことを地元で教えてもらった。 |
| 17年9月 |
その後、県道117号線と交差して浅舞市街地に入り、一車線に変わった道路(写真N)の突き当りに浅舞(写真O)が設けられていた。広い構内を持った駅跡は住宅や工場等に利用されるものの、駅前広場の一部はいまだ空き地のままだ。道路転用はここで一旦終了し、駅の西方にはJA施設や工場、店舗等が建つ。その中には空き地となった路盤跡(写真P)も一部姿を見せている。
西に向かう路線は本荘街道と呼ばれる国道107号線を横断し、老人ホームを過ぎて再び二車線道路に変わる。鉄道跡を拡幅転換して建設された道だ。
二代目豊前(写真Q)は集落からつながる生活道との交差点東側で、南にホーム、生活道に面して駅舎が設けられ、無人駅であったと聞いた。
しかし昭和28年版の地形図では交差点西側に駅が記され、こちらが初代駅(写真R)と思われるものの、移設の理由が判然としない。耕地整理に伴う変更と考えるのがもっとも合理的だが、誤記の可能性も捨て切れない。
さらに道路上には羽後里見(写真S)、沼舘(写真T)、船沼(写真U)、館合(写真W)と各駅が続いていく。跡地にはJAの施設が建ち並び、まさに廃止された地方鉄道の典型を地でいく、教科書のような区間だ。ただ館合駅跡に建つ館合農協は照明も点かず寂れた感じが漂う。これも時代の趨勢かもしれない。また道路は途中から県道13号線へ、さらに団体営農道と名称を変え、進む方向も北へと変わる。
旧雄物川町に属した各駅には、当時の教育委員会の手による標柱(写真V)が立てられ、その存在を後世に伝えている。
しばらく北上した農道はやがて西に進路を曲げ、一級河川の雄物川を越える。川の手前に築堤跡(写真X)が放置され、川面からも橋脚(写真Y)の一部が顔をのぞかせている。
対岸は一旦生活道に転換され、その突き当りに羽後大森(写真Z)が置かれていた。駅跡はやはりJA施設となり、集落からのアクセス路も確認できる。
この先、線路跡は水田の中へと埋没し、再度跡地をたどれるのは県道29号線に合流してからとなる。この道も合流点以西は横荘線跡地を再利用している。道路上の上溝(写真AA)は短命のためか地形図に記載がなく、道路脇に立つ標柱からその位置を知ることができる。
| 西に向う県道がやや南にカーブを描き始めると、指定番号が29号線から164号線へと変わる。その変更点南方に八沢木(写真AB)が位置していた。駅跡はバスの転回場として使われていたが、路線の廃止により今は隣接する農協の駐車場のような形をとっている。 |
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AB |
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93年4月
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AC |
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駅を後にした横荘線は、大きなS字カーブを描きながら南へと延びていく。
次の駅は集落からすこし離れた二井山(写真AC)で、やはり駅跡を示す標柱が立てられる。一時期、終着駅の役割を担っていたが、現状から昔日の様子を偲ぶことは難しい。 |
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93年4月
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| この先は山岳地帯の峠越えとなり、曲りくねった路線に5ヶ所のトンネルが続く当線一の難所でもあり、建設に多額の出費を強いられたであろう区間だ。最初の廃止区間となったのは、なんとも皮肉な運命というべきか。鉄道用地は県道48号線として生れ変わり、車の通行も可能。ただ最初の二井山トンネル(写真AD)は崩落の危険があるらしく、現時点で通行止とされる。 |
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AD |
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93年4月
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AE |
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トンネルを迂回して転用道路に戻り、御岳(写真AE)、金屋(写真AF)と連続するトンネルを抜けたのち、峠に位置する浮蓋トンネル(写真AG)にたどり着く。各トンネル内部は漏水防止のためか、不思議な補強がなされる。なお県道の路肩崩落個所は復旧工事の予定もなさそうで、このまま通行止から廃道につながる可能性も頭をよぎる。さらに冬季は除雪されず、積雪となればそのまま通行止となってしまう区間でもある。 |
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93年4月
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AF |
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AG |
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| 17年9月 |
93年4月 |
| 浮蓋トンネル西方には浮蓋(写真AH)が設けられていた。駅に接続する旧道もあったが、今では立ち並ぶ電柱がその位置を示すのみとなり、駅跡も残念ながら推測の域をでない。 |
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AH |
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| 17年9月 |
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AI |
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最後に待ち構えるのが笹倉トンネル(写真AI)で、曲線のため出口側は見通せない。しかし唯一照明が完備され、地域の重要な交通路となっていること示している。また出口脇には、トンネルから湧き出る「名水笹倉の水」の取水口が設置され、試飲したところ、これがなかなか美味い。 |
| 93年4月 |
続けてすこし長めの切通(写真AJ)が現れる。トンネルとはまた趣が異なり、それでいて鉄道の雰囲気をしっかり残している。
山あいを抜け出ると右カーブで県道から分離する。同所に小川を渡る橋台跡(写真AK)が残され、さらに進むと石沢川に行く手を遮られるが、以前はここにも鉄道時代の橋台(写真AL)を見つけることができた。橋前後の築堤がきれいに削られ、まさに唐突に現れるといった感もあった。これは既に姿を消したが、下流側の堰撤去に影響されたのか、今は河川内に橋脚痕を確認することができる。 |
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AJ |
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93年4月
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AK |
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AL |
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| 17年9月 |
93年4月
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AM |
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川を越え圃場整備された農地内を進むと、最後は一車線の舗装路に変わり終点老方(写真AM)に到着する。駅跡は東由利町の役場を経て、グループホームとして利用される。ここは東線の暫定終点で、西線の前郷と結び本荘まで直通する予定だったが、その西線は昭和に入ってまもなく矢島線として国有化され、当初の計画はこの時点で潰えている。 |
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93年4月
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参考資料
- 鉄道ピクトリアル173号／羽後交通／金沢二郎 著・・・私鉄車両めぐり
- 鉄道廃線跡を歩くⅡ／羽後交通横荘線／宮脇俊三編著
- RM LIBRARY61／羽後交通横荘線／若林宣 著／ネコ・パブリッシング・・・沿革と現役時代の紹介
参考地形図
| 1/50000 |
 横手 |
[S28応修] |
浅舞 |
[S28応修/S44資修] |
大曲 |
[S39改測] |
|
|
| 1/25000 |
横手 |
[S43測量] |
浅舞 |
[該当無] |
角間川 |
[該当無] |
老方 |
[該当無] |
最終更新日2024-6/7 *路線図は国土地理院電子地図に追記して作成*
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