多古線	地区：	千葉県成田市	区間：	成田〜八日市場／30.2km	軌間：	600→1067mm／単線	動力：	蒸気・内燃
八街線	地区：	千葉県八街市	区間：	三里塚〜八街／13.8km	軌間：	600mm／単線	動力：	蒸気・内燃

明治の終わりから大正の初めにかけて、千葉県が県内各地に人車軌道を含む数路線の鉄道を開業させた。この中で多古線は車輛や資材を陸軍鉄道連隊から借り受け、また八街線は連隊が演習目的で敷設した支線の一部を利用したため、国内では珍しい600mm軌間が採用された。しかし収支は開業当初から赤字続きで、持て余した県は両線を成田鉄道に売却した。その後、会社は多古線を改軌し、国鉄からの直通列車を受け入れるなど小康状態を続けたが、陸軍の八街飛行場建設に伴って予定地を通る八街線が廃止となり、多古線は第二次世界大戦中に不要不急路線として休止されてしまった。

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略史

明治	44(1911) -	7/	5	千葉県営鉄道 多古線	開業
大正	3(1914) -	5/	18	〃　　八街線	開業
昭和	2(1927) -	4/	1	多古/八街線を成田鉄道に譲渡
	15(1940) -	8/	19	成田鉄道 八街線	廃止
	19(1944) -	1/	11	〃　 多古線	休止
	21(1964) -	10/	9	〃　　〃	廃止
	〃	11/	26	成田バスに改称
	30(1956) -	11/	13	千葉交通に改称

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路線図

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廃線跡現況

−多古線−

A			この鉄道の出発点となる成田(写真A)。昭和2年の地形図では、JR駅前の宗吾線駅に乗り入れる形を取り、9年版で成田線との共同駅に移行している。ただ宗吾線とは軌間も動力も異なるため、直通運転は不可能だった。既に廃止後半世紀以上が経ち、初代、二代目とも、その面影を見出すことは難しい。
17年9月

西成田(写真H)は次の生活道を越えた東側築堤上に置かれていたが、盛土が大きく削られたため、駅跡の雰囲気はどこにもない。			H
			17年9月

I			引き続き東に向かう路線は数軒の民家を通り過ぎたのち、一車線の生活道(写真I)に姿を変える。ただし道路は成田国際文化会館の前で途切れ、その後は国道408号線ロードサイドの店舗敷地内に入り込む。
17年9月

さらに国道の南奥で右カーブを描くと、やがて旧線との合流点東成田(写真J)に着く。現在のコンビニ付近から南方の三階建アパートに掛けて、との教示を現地で受けた。ただ実際のレールは、建物の東奥を通り抜けていた模様だ。			J
			17年9月

なお東成田から当駅間も新線への切り替えが計画され、認可も受けたが、予定ルートを調べても工事に着手した形跡は見られなかった。 駅の南方で平行する県道62号線と交差し、その北脇を併走しはじめるが、既に路盤(写真N)の大半は道路沿いの民家や工場に取り込まれている。			N
			17年9月

O			県道が小さく右に曲がった地点から、多古線跡に一車線道路(写真O)が現れ、狭くなったり広くなったりしながら続いていく。ただ県道が平行するため、通行車両はほとんどない。
17年9月

三里塚(写真P)は、宅配便営業所付近から東に向けて広がっていた。八街線との接続駅でもあり機関区等を備えた大きな構内は、現在宅地として細かく分断され、昔日の面影を探し出すことは断念せざるを得ない。 現地で、南北に通り抜ける道路が当時の駅前道路だったこと、駅舎は道路沿いの駐車場やや南方に位置したこと、跡地に建つ設備会社の東端とホーム東端がおおよそ一致するらしいこと、成田空港建設反対運動が治まると同時に宅地化が進んだこと、等々の話を聞くことができた。			P
			17年9月

U			その旧線側は分岐後すぐ、藪地に行く手をふさがれる。以前は道路がつながっていたとの話も聞いたが、残念ながら現時点で跡地のトレースは困難になっている。やむなく迂回して北側に回り込むと、ルート上に再び道路(写真U)が姿を見せる。ただし路面は雑草に覆われ。作業道のような状況だ。
17年9月

新線側は途中から下り勾配に変わると同時に、幅員が二車線に広がる。その道路上に位置した二代目五辻(写真Z)には、同名バス停が設けられている。			Z
			17年9月

AA			続く二代目飯笹(写真AA)も同名バス停のやや西方で、当時からの駅前商店が現在も営業中。この商店は鉄道開通前から存在し、一部が線路用地にかかるため現在の場所に移動したと聞いた。駅の先で越えていた多古橋川(写真AB)は新河道への付替が完了し、道路上には何の痕跡は認められないが、傍らに案内看板(写真AC)が設置され、その存在を後世に伝えている。
17年9月

その後、右カーブを描き南に向きを変えると、旧線が左から合流(写真AD)する。軌を一にした路線は一旦県道79号線上を進むことになるが、旧線側はすぐ東に離れてしまう。			AD
			17年9月

旧線は駅の南から染井交差点まで生活道(写真AF)に変わり、同所南で新線側の国道296号線と交差し、その位置を入替える。さらにコンビニ裏を左カーブで抜けたのち国道に合流するが、この先も両線は離合を繰り返す。なおバス専用線として利用されていた区間は、この染井交差点付近までと考えられる。			AF
			17年9月

AG			以降の旧線跡は農地(写真AG)や駐車場等に利用され、今では痕跡も認められず、直接跡地をたどることは困難になっている。
17年9月

再び同一ルートに重なった両線が多古市街地の南端に近づくと、旧線側は国道からやや北寄りに進路を取り(写真AH)、JA施設をかすめた後、南北に走る田町通りの東奥を北上する。その跡地は既に沿線の民家に取り込まれているようだ。			AH
			17年9月

AI			開業当初の終点、初代多古(写真AI)は、昭和2年版地形図により建設会社事務所及び道路を挟んだ北側一帯と考えられるが、地元で確認を取れなかったのは残念。しかし、駅の北方にあった繭市場までレールが伸びていたとの話を聞くことができた。この繭市場跡、現在は歴史民俗資料館へと変わっている。さらに付け加えるならば、大正2年版地形図では、ここに多古が記され、数次の変遷を経た可能性を示している。
17年9月

昭和20年代の空中写真では、繭市場から更に北東へと進み、栗山川へ接続する路盤らしきルートが写し込まれている。これが貨物用の栗山川荷扱所線であった可能性が高く、川岸に設けられた船着き場(写真AJ)は、当時の物資中継点とも考えられる。			AJ
			17年9月

AK			国道上を進む新線側は、そのまま東へと向かい、沿道のJAスタンドからドラッグストアにかけてが、八日市場延伸に伴って移転した二代目多古(写真AK)となる。当時、駅前止まりだった田町通りは、信号交差点を介して南への通り抜けが可能になっている。
17年9月

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−八街線−

道路はやがて県道106号線にぶつかり終了する。この手前に根木名(写真AR)が置かれていたが既に痕跡はない。			AR
			17年9月

AS			突き当りの住宅地内を進むと、再び舗装路(写真AS)が現れる。八街線のルートに一致するものの、新興の住宅地内街路のため、線路跡転用である確証は得られない。
17年9月

その後、鉄道側は道路から左に離れ、県道43号線とその西側に平行する生活道との間(写真AT)を南下する。大半は空き地となるが、一部には店舗や住宅も建つ。ただし幅が10m程あり、どのあたりにレールが敷設されていたのか、今となっては特定は難しい。			AT
			17年9月

AY			南に向かう路線は右カーブでやや西に向きを振り、やがて十倉(写真AY)に至る。小さな十字交差点の南側だが、無人の停留所のためか、やはり地形図には描かれない。
18年9月

転用道路はその後T字路に突き当たって終了するが、直進する八街線は農地内を進み、県道77号線と交差したのち実ノ口(写真AZ)へ達する。駅は同名交差点から南東に伸びる小径を遮るように設置され、複線の構内や貨物ホームも有していた跡地には、既に数軒の民家が建ち並ぶ。また当時の小径は東側に大きく迂回していたが、鉄道廃止後に現状のごとく直線化された。			AZ
			17年9月

BA			駅の先も農地や民家の中を通り抜けながら南進し、やがて西方を走る県道43号線に接近し、道路沿いのコンビニ南方で交差する。この東側と思われる八街街道も痕跡はなく、上記広報でおおよその位置を知るのみだ。 同所で西に向きを変えるが、相変わらず耕地整理の済んだ農地の中を走るためルートの特定は困難で、一カ所だけニンジン畑の北端(写真BA)が線路跡に相当すると聞いた。
17年9月

さらに沿線で、農地内に建つアンテナ塔(写真BB)の南方を通っていたこと、畑を掘り返すとバラストが出てくること、正確な跡地は掘り返してみないとわからないこと、列車に乗るには駅ではなく、上り勾配で速度の落ちた時に線路脇から飛び乗ったこと、昔は小高い丘陵もあったが飛行場の建設時に平坦にならしたこと、等の教示を得た。 しかし途中の古込は判然とせず、当時の用地境界線を見い出すことも難しい。			BB
			17年9月

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参考資料

1. 鉄道ピクトリアル通巻156号／成田鉄道／白土貞夫　著・・・失われた鉄道・軌道を訪ねて
2. 鉄道ピクトリアル通巻544号／成田空港をめぐる鉄道の成立／白土貞夫　著

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参考地形図

1/50000	成田	[大2鉄補/昭9修正]	八日市場	[昭9二修]	東金
1/25000	成田	[昭2鉄補]	成田国際空港	[大10測図]	多古	[昭2鉄補]	八日市場	[該当無]
	酒々井	[昭2鉄補]	八街	[大10測図]

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