王子製紙苫小牧専用線を訪ねて

廃止鉄道ノート北海道  減速進行

   地区:北海道苫小牧市 区間:苫小牧〜第四発電所/分岐点〜湖畔/採砂線/連絡線/延長線 軌間:762mm単線
   動力:人力・馬力→蒸気・内燃      

王子製紙の苫小牧進出が決まると、工場動力源としての発電所建設に向けて千歳川への専用線敷設が始まった。発電所建設終了後は御料林の木材搬出や、千歳鉱山の金鉱石輸送を担い、観光地として支笏湖の名が広まると、やがて旅客輸送も開始した。同社は日高方面に向かう路線も建設したため、そちらが浜線、当線は山線と呼ばれ親しまれていた。しかし戦後になって平行する道路が整備されると、その役目を自動車に譲って廃止された。


 略史
明治 41 (1908) - 4/ 王子製紙専用線 開業
8/ 12      蒸気動力に変更
昭和 26 (1951) - 8/     廃止

 路線図



 廃線跡現況
A 当線の苫小牧(A参照)は省線駅の北西に位置した。開業時に旅客輸送の想定はなく、後付のような形で駅舎が造られたため、乗換客が不便であったことは想像に難くない。その構内は当初の目的であるダム建設資材等の置き場として、土場が広がっていたと考えられる。

また方向転換用のデルタ線も備えていたが、駅の東側に描かれた図面、西側に描かれた図面、異なる二枚の構内図を見つけることができた。一枚は手書きだが、時代に応じて構内配線が改良されていったことを示している。
18年6月
東に向かう本線は左カーブで向きを変えた後、一車線の生活道(B参照)に重なる。

ただ市街地のため、線路跡がそのまま道路転換されたのか疑問もあり、地元で確認するものの情報は得られなかった。
B
18年6月
C 住宅地を抜けると国道276号線に合流し、緑ヶ丘公園の入り口から廃線跡を利用した自転車道が始まる。しかしこのスタート地点では両者に多少のずれがみられ、鉄道側は国道の東奥を生活道(C参照)として抜けた後、すぐに合流するといった形を取る。

自転車道は国道に隣接し、歩道と一体になった箇所や、若干離れて独立した箇所がある。
18年6月
道央道をくぐり、しばらくすると左から送電線が割込み、国道と自転車道はやや距離を離す。その手前、ベンチが置かれた休憩所(D参照)にはクマ注意の看板も立てられ、緊張が走る。ただ、地元の人は注意書きにあまり関心はないようで、神経をとがらせているのは慣れない道外の人間だけなのかもしれない。

真ん中を走る送電線に沿って、保全用と思われる未舗装路も続くが、チェーン等によって閉鎖されている。
D
18年6月
E 最初の高丘(E参照)は当初地名がなく、苫小牧からの距離により六哩と称されていた。宿舎等も備えていたはずだが、その面影はどこを探しても見つからず、正確な位置の確認は取れない。

北西に延びる自転車道は、やがて丘陵に押し出されるように近づいてきた国道をアンダークロスし、その南脇に移る。
18年6月
鉄道側は、そのまま立入禁止の未舗装路(F参照)として続いていく。やはり送電線の保全作業道として使われているのかもしれない。しかし自転車道がなぜ、この一部区間のみ別ルートを選択したのか、部外者には不思議に映る。

路線バスが運行されていた時代には、同名のバス停が設けられていた十哩だが、バス廃止後の現在、おおよその場所すら掴むことは不可能だった。沿線に人家は全く見当たらず、地元で聞き取り出来ないことも大きな痛手となる。
F
18年6月
G 当初十二哩と呼ばれた勇振の手前で、国道の南脇を走っていた自転車道が再び線路上に戻ってくる。
しかし駅近くにあった飯場や社宅はすでに跡形もなく、ここも駅跡の正確な特定は難しい。

次の丸山(G参照)は当初十三哩を名乗り、中間駅としては唯一の小さな集落を形成していたが、木材集積用の土場を含め、今その面影はすべて消え去っている。
18年6月
ここからは自転車道に案内看板や行き先表示が設置され、若干雰囲気も変化する。千歳に入り、道々の支笏湖公園自転車道に変わるためだ。

支笏湖方面と発電所方面の分岐部で、駅名も素直に付けられた分岐点(H参照)近くまで来ると、自転車道と未舗装路が併走する。こうなると、どちらが線路跡なのか判断に戸惑い、また正確な駅位置も確認は取れない。
H
18年6月
I ここから支笏湖方面の路盤は、すでに森林と同化し全く不明となる。しかし左急カーブが終わり、発電所方面からのルートと合流したのちは、未舗装道路(I参照)としてその姿を現し、やはり送電線が隣接する。
18年6月
西に向かう道路は、やがて国道453号線と鋭角に交差する。ここに滝ノ上が設けられていたようだが、やはり痕跡は見つけられない。駅の先からは登り勾配が始るものの、すぐ立入禁止になってしまう。所有者は今も王子製紙となっている。

その西方、平行して北を流れる千歳川に発電取水用の堰が設けられ、右岸には管理用の空き地(J参照)が広がる。ここが駅跡と言われれば、納得してしまう場所でもある。
J
18年6月
K 舗装路と併走する路線は藪地へと変化し、直接のトレースは難しくなる。しばらくして舗装路が左折すると、その先は線路跡が道路を引き継ぐが、右手の千歳川に架かる湖畔橋を過ぎてからは幅員が更に狭くなり、同時にチェーンで進入が禁止されてしまう(K参照)

但しこれは車に対するもので、湖岸側からは歩いてたどり着くことが出来る。つまり遊歩道になっているようだが、表示、説明がないので困惑する。
18年6月
支笏湖岸に出ると、まずトラス橋(L参照)が目に入る。千歳川の右岸と左岸を結んだ鉄道橋で、千歳市により復元保存され、観光客向けの歩行者橋として供用されている。

列車だけではなく、橋上を歩く人の姿が当時の写真にも残され、また渇水期にはそれ以前の木橋跡が顔を出すとの情報もある。
L
18年6月
M 湖畔は千歳川を挟んだ両岸に置かれ、左岸側は木材の積込みやデルタ線による方向転換等に利用され、右岸側(M参照)は旅客の乗降、湖上を運ばれて来た金鉱石の積込みに利用されていたようだ。
18年6月
分岐点から発電所方面は、自転車道と未舗装路が併走したまま(N参照)道々16号線に近づき、その西奥を北上する。
意識することはないが、その下には発電用の導水管も埋設されている。

・・・逆に、いやでも意識せざるを得ないのが、点在するクマ目撃情報や、注意喚起看板だ・・・
N
18年6月
O 道路上をしばらく北に向かうと、左手に大きな空き地が広がる。第一発電所建設のために設けられた水溜(O参照)だ。ここで発電された電気は、専用線に平行した送電線で苫小牧まで送られ、製紙工場の動力源となった。

しかし電気をつくる発電所、さらに線路伝いの送電設備が用意されているとなれば、誰でも思いつくのが鉄道の電化だ。石炭火の粉による山火事も防げるし、途中給水の必要もない。これだけの好条件がそろった中で、なぜ電化されなかったのか、今も頭の片隅に疑問が残されている。
18年6月
駅の先で右に曲がると、道々とは多少距離を置き始める。さらに左手から再び送電線が合流したのち、自転車道は送電線に沿って右に曲がるが、線路跡は未舗装路(P参照)となり真っすぐに進む。入口に立ち入りを制限する支柱が設けられた形跡もあるが、既に用をなしていない。

その後再び道々に近づき、自転車道と合流する。
P
18年6月
Q なだらかな下り坂でつながっていく自転車道は、苫小牧側が変化に乏しかったのとは対照的で、途中には距離標識も設置され、道々872号線の文字も見える。

第三発電所は、発電所へ向けての支線分岐地点に置かれていたようだ。この支線跡を転用したと思われる道路入口には、立ち入りを制限する門(Q参照)がしっかり現存する。ただ構内は既に荒地に変わり、近年使用された形跡はない。
18年6月
駅を後にして東に進むと、道々との間につくられた水明郷パーキング(R参照)に到着する。
近くに名所があるわけでもなく、設置の目的はよくわからないが、サイクリングの休憩には役に立ちそうだ。ただ、トイレがないのはやや残念なところ。
R
18年6月
S その後しばらくすると、右手に並んでいた送電線が自転車道を横切り、北に離れていく。専用線もこれに追従して第四発電所までつながっていた。

跡地に沿って作業道(S参照)は続くが、立ち入りが禁止されているため、残念ながら終点附近の調査はあきらめざるを得なかった。
18年6月
苫小牧から北西は向かう坊主山延長線(T参照)は、苫小牧川を越える少しの区間を除いて今も王子製紙の所有地で、こちらも調査する術がない。

また海岸への採砂線も、市街地に飲み込まれた痕跡を探し出すことは難しく、まさにお手上げ状態という言葉が連続する結果となってしまった。
T
18年6月

 −保存車両
U 苫小牧市中心部のアカシア公園に、SLと客車が展示保存(U参照)されている。屋根付き施設でもあり、状態は良い。
18年6月

 参考資料
  1. 苫郷文研まめほん5 王子山線物語/苫小牧郷土文化研究会まめほん編集部
  2. 胆振見聞録VOL.17/一耕社
  3. 苫小牧市史下巻/苫小牧市

 参考地形図
1/50000  苫小牧 [M42部修/T8測図/S10修正]  千歳 [S3鉄補]  樽前山 [S10修正]        
1/25000  苫小牧 [該当無]  胆振高岳 [該当無]  樽前山 [該当無]    支笏湖温泉 [該当無]
     胆振蘭越  [該当無]                        

 
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制作公開日2018-8/17  無断転載禁止 Copyright (C) 2018 pyoco3 All Rights Reserved.