地区:山口県岩国市 区間:港〜新町/5.7km 軌間:1067mm/単線 動力:電気
錦帯橋の名所を抱える岩国。明治期に山陽本線は開通したものの駅が市街地から離れていたため、国鉄駅と町の中心を結ぶため岩国電気軌道が計画された。日本の電車発展に尽力した藤岡市助により中国地方最初の電車として開業したが、20年後に平行する国鉄岩徳線が開通したことに伴って廃止された。廃止時に経営は山口県に移って岩国電気軌道の名称は消えていたが、これも既に70有余年を経過。いまでは非電化の岩徳線と比較し、単に昔の「電車」と呼ばれている。
略史
明治 |
42(1909) - |
2/ |
2 |
岩国電気軌道 |
開業 |
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45(1912) - |
2/ |
21 |
〃 岩国駅〜港 |
延長 |
大正 |
10(1921) - |
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〃 柳井中外電気と合併 中外電気に改称 |
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13(1924) - |
4/ |
1 |
山口県営となる |
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昭和 |
4(1929) - |
4/ |
5 |
〃 |
廃止 |
路線図
廃線跡現況
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A |
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起点の新町(写真A)は現在の郵便局付近となる。軌道と名が付くものの全線が専用軌道で、北東方向に出発した路線は一旦市道の拡幅に利用されたのち、右カーブで南東に向きを変える。 |
02年10月 |
同所から一方通行の生活道(写真B)に転用されはじめる。入口に構える商店で当時の様子を訪ねるが、郵便局まで線路は続いていなかったとの話となる。廃止からの時間が長期に及ぶため、うまく歴史が伝わっていないのかもしれない。 |
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B |
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23年03月 |
道路の途中には錦見(写真C)が設けられていた。また、道幅の狭さにも負けず路線バスが運行され、逆方向のバスは錦帯橋につながる旧道を通る。
さらに一方通行の出口側にあったのが新小路(写真D)で、旧山陽道との交差西側に位置し、ホームもなく駅と呼べるほどではなかったとの話を聞いた。その先、JRの西岩国駅構内を横切りほぼ真東に進むが、すべて宅地として再利用され、土地境界線等を含めて一切の痕跡は発見できない。
錦見ポンプ場付近に設置されていた火力発電所跡を過ぎると、今度は県道15号線に転用される。直後の切通(写真E)は鉄道用として開削されたが、現在は道路利用のため大きく拡幅されている。
県道が白崎八幡宮の横(写真F)をかすめた先に、八幡(写真G)が置かれていた。ここは岩国学校教育資料館に掲示された地図と、昭和2年版地形図で若干のずれが見られ、地形図側は横断歩道(写真下)の西側を指し示している。
ここからは県道脇に線路が敷設されていたはずだが、上記地形図では併用軌道として描かれている。いずれにせよ既に道路の拡幅に利用されたと考えられ、痕跡の発見は難しい。また明治43年版では、途中にトンネルらしき記号が三ヵ所記されるものの、今では跡形もない。跨線橋と受け取ることもできるが、それらしき道も確認できない。
次の今津(写真H)は、今津3丁目交差点の西側となる。
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I |
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駅の先で、この鉄道が廃止される要因ともなった岩徳線と交差する(写真I)。当線の最終運行日が昭和4年4月4日、岩徳線の開業が同年4月5日で、交差部のレール切替は一夜にして実施されたようだ。 |
02年10月 |
県道が国道188号線に突き当たって終了(写真J)すると、レールは一旦国道上に移るもののすぐ東に離れ、山陽本線に接近していく。しかし周辺は第二次世界大戦時の空襲によって壊滅的な被害を受けたため、正確なルートをたどることはほぼ不可能となっている。新しく生まれ変わった商店街では、聞き取り調査も思うに任せない。
現JR駅ビルの南西角付近に設けられていたと思われる岩国駅(写真K)。やはりここも正確な場所は掴めない。
なお23年時点の様子からは、そのまま駅前を横切って北に線路がつながっていたとは信じ難いが、当時は岩国市街地の外縁にすら接しない郊外だったことが幸したようだ。
駅から北は後年延伸された区間で、JR駅構内を抜け、さらに国道2号線との交差後は一車線の生活道(写真L)に転換される。 |
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L |
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23年03月 |
道路はやがて二車線の市道(写真M)に合流し、こちらが軌道の転用道路に変わる。
そのまま進み、麻里布川の堤防道路となる旧国道に達した地点が、終点港(写真N)となる。海上輸送との中継を目的とした開業と考えられるが、ここから岩国新港まではまだまだ遠い。麻里布川を利用して荷の受け渡しを行っていた可能性も捨てきれないが、詳細は今のところ不明。
なお港の文字は資料によって湊と記される。
参考資料
- 岩国電車誌/前川重雄 著/岩国現代史研究会 (岩国市史に転載あり)
参考地形図
1/50000 |
岩国 |
[M43鉄補] |
大竹 |
[S2修正] |
1/25000 |
岩国 |
[該当無] |
大竹 |
[該当無] |
最終更新日2023-4/25 *路線図は国土地理院地図に追記して作成*
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