防石鉄道を訪ねて
廃止鉄道ノート中国 減速進行

 地区:山口県防府市  区間:防府~堀/18.8km  軌間:1067mm/単線  動力:蒸気・内燃

九州から山陰までを結ぶ、壮大な計画で設立された防石鉄道。設立当初は石見益田の石、三田尻の三から石三軽便鉄道と称し、開業時に防石鉄道と名を変えた。その後山口線が開通したことにより防石鉄道当初の計画はあえなく潰えている。ここ中国地方には幾多の陰陽連絡鉄道が計画され、ことごとく挫折している。この鉄道も残念ながらその中の一つに数えられてしまった。

路線図

略史



大正 3(1914)- 5/ 3  石三軽便鉄道  設立
5(1916)- 5/ 29  防石鉄道に改称
8(1919)- 7/ 5     開業
昭和 39(1964)- 7/ 1     廃止

廃線跡現況

三田尻駅跡 A 今は防府と名を変えた三田尻(写真A)。山陽本線の高架化などにより駅周辺は再開発され、写真奥に設けられていた防石鉄道出発点の面影はすっかり消えてしまった。
03年1月
線路跡そのものは、駅前より続く小径沿いに走っていた模様だが、現在は大半がビルや駐車場に変わる。何か手掛かりでもないかと西へ進むと、一部削られてはいるものの小さな橋台(写真B)を見つけることができる。 B
03年1月
C 県道185号線との交差箇所からは遊歩道(写真C)として再利用され、更に県道187号線を越えると中央に遊歩道、両側を車道とした道路(写真D)に変わる。その後、歩道が途切れ、両側の車道だけが堀方面へ続くこととなる。
続く右カーブで北に向きを変え、県道54号と交差したのち周防宮市(写真E)に至る。車庫を併設した駅跡は防府構内タクシーの営業所となり、バス等の駐車場も備えた大きな敷地は当時のままだ。
18年3月

D
18年3月
E
03年1月

この先、廃線跡は県道184号線として拡幅転用され、主要道路として交通量もかなり多い。ただ同時に鉄道時代の遺構発見は諦めざるをえない。
短距離で続く船本(写真F)は、佐波川の本橋へ通ずる旧道踏切北側に置かれていた。今は河川改修により橋は架け替えられ、取付道路も新設されている。
F
24年3月
G
03年1月
県道が山陽道と新幹線を連続でアンダーパスした先の人丸(写真G)は、同名バス停が目印となる。なお一部で旧道が平行するものの、こちらは既に側道や地元の生活道へと変化している。
H
03年1月
真尾(写真H)には今も道路脇にホーム跡が残り、当時からあったと思われる駅前商店は今も盛業中。鉄道時代の雰囲気をよく残している。
奈美(写真I)は同名バス停のやや南寄りと考えられる。それにしても、女性の名前にも似た優雅な漢字の駅名が続くことに感心する。駅の北にあった唯一の大歳トンネル(写真J)は開削されて切通となり、何の痕跡も残されていない。県道を走るだけなら気付くことはなさそうだ。

I
24年3月
J
18年3月

K 開業当初の終点上和字(写真K)も県道上で、駅跡にはホームや客車が長らく保存されていたが、現在はホームを残してすべて撤去された。防府方面の次駅を真尾と表示した駅名標や標柱(写真L)もあったが、これも過去のものとなってしまった。
03年1月

L
03年1月
さらに県道を北上すると岸見(写真M)に至る。野尻バス停が設けられ、道路脇には駅構内の広がりを示す余地も認められる。
M
03年1月

N
24年3月
次の奥畑(写真N)は格下の停留場だったためか地形図に記載が無く、距離計測と1963年の空中写真により位置を特定した。
大きな構内を持った停車場はそのままバス停に転用されるが、ホーム一本のみの停留場はバス停車帯を別途確保する必要に迫られたようで、当駅に於いても鉄道駅とバス停に若干の隔たりがある。
O
03年1月
続く伊賀地(写真O)山根(写真P)は共に現在のバス停付近と考えられ、道路幅員に駅跡らしい広がりも認められる。前者のバス停名は鉄道時代と同じだが後者は船津とされ、命名の基準が部外者には理解しずらい。
当線内で五ヵ所目の停留場となる沖ノ原(写真Q)も駅を記した地図を見つけられず、場所を特定するため距離計測と空中写真を駆使した。ここも同名バス停とはやや食い違いが認められる。

P
03年1月
Q
24年3月

R
18年3月
最後に島地川を二連のトラス橋で渡り、佐波川の左岸堤防上(写真R)を進むと終点に到着する。既に撤去されたが、構内北側の三階建ビル(写真T左)から撮ったと思われる写真では、呉服店の正面に駅舎、やや南方の旅館西側に倉庫と貨物ホームが写る。後者が開業時の初代駅(写真S)で、前者の二代目(写真T)は昭和33年構内北端に新設されたものと考えられる。
跡地は住宅地となるが、一旦バスターミナルを経て現在の姿に変わったようだ。また隣接する道が、駅前通りと呼ばれていたことを地元で教えてもらった。

S
03年1月
T
18年3月

保存車両

U
03年1月
JR防府駅西数百メートルの旧山陽線上に当時の車両が保存(写真U)されており、程度はよい。車両を載せたレールは、高架になる前のJR旧路線を一部残したとの説明もある。

参考資料

  1. 鉄道ピクトリアル通巻160号/防石鉄道/窪田正実 著・・・私鉄車両めぐり
  2. 追憶防石鉄道株式会社/防石鉄道OB会

参考地形図

1/50000   防府 [S32要修]   長門峡 [S32要修]
1/25000   防府 [S2測図/S26修測]   矢田 [S26修正]   堀 [該当無]   島地 [該当無]

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最終更新日2024-3/31  *路線図は国土地理院電子地図に追記して作成* 
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