西武鉄道安比奈線を訪ねて
廃止鉄道ノート関東 減速進行

 地区:埼玉県川越市  区間:南大塚~安比奈/3.2km  軌間:1067mm/単線  動力:蒸気→電気

入間川の砂利採取を目的として敷設された貨物専用線。昭和の半ばに一旦休止された後、車両基地の建設計画が浮上したことで廃止は先延ばしされてきたが、平成の終盤になってようやく決着が付けられた。列車が走らなくなって既に半世紀以上経つものの、今も大半の区間でレールが残され、全国的に見ても特異な廃線跡と言える。

略史

大正 14(1925) - 2/ 15  西武鉄道 安比奈線 開業
昭和 38(1963) -       〃 休止
平成 29(2017) - 5/ 31       〃  廃止

路線図



廃線跡現況

A
22年9月
新宿線との接続駅、南大塚(写真A)の北側には安比奈線の用地が残され、駅構内から分岐していたような印象を受けるが、単線時代は今より川越寄りに駅が設けられていたため、その手前から分かれる配線となっていた。
B
22年9月
駅を出ると左カーブを描き、北西に向きを変える。路盤はそのまま残され、直後の踏切(写真B)もレールは未撤去のままだ。続く曲線区間では、なぜか枕木から外されたレールが二本並べて放置されている。
C
22年9月
カーブ終了地点で国道16号線を横切る(写真C)。路面はアスファルト舗装されるものの、軌間幅に合わせたひび割れが見られ、未だ下側にレールが隠されているように見受けられる。
D
22年9月
ここから先は当時の線路がそのまま放置され、現在も各踏切(写真D)では路面からレールが頭をのぞかせている。
住宅街を進む路盤内は立入禁止とされ、線路が草に隠される箇所も多いが藪地化への進行は見られず、定期的な手入れがなされているようだ。
E
22年9月
密集地を抜けると、直後に渡る小川(写真E)にワンスパンのガーダー橋が架けられている。ただ既に雑草に覆い包まれ、わずかに腐った枕木と橋桁を垣間見るのが限度となる。
F
22年9月
続く新河岸川(写真F)には二連のデッキガーターが設置され、川幅に比べると何ともオーバースペックに映る。もしかしたら避溢橋を兼ねているのかもしれないが、流路以外に生い茂る雑草、雑木は、近い将来、橋梁の存在を隠してしまう可能性もある。22年時点で南側直近からなんとか確認を取れるものの、橋脚を含めたすべてを見渡すことは難しい。
G
22年9月
川を越え築堤を下り終えると、一車線の市道と交差する。やはり未撤去のレールは、そのまま西方の水路痕(写真G)につながる。桁のないタイプと思われるが、軌条を支えていたはずの枕木は朽ちて跡形もない。
H
22年9月
その後、線路の大半は雑草の中に隠れてしまうものの、点在する小橋梁跡(写真H・J・K・L)や踏切跡(写真I)で露出を繰り返し、存在を顕示しているようでもある。
ただしレールに比し、枕木の劣化はもはや救いようがない。

I
22年9月
J
22年9月

K
22年9月
L
22年9月

M
22年9月
ここまでは側道等を利用して何とかルートをたどることができたが、川越山城霊園南側の踏切(写真M)以降は藪地となって入り込めず、直接の追従が難しくなってしまう。
N
22年9月
やむなく一旦迂回して廻りこむと、藪地の中にもレールの露出する箇所(写真N)を見つけることができる。
雑木林を抜け出た直後に二車線道路と交差し、ここで初めてレールが途切れる。道路の拡幅に合わせ、踏切も撤去されたものと思われる。
O
22年9月
その西側にはデッキガーダー橋(写真O)が残され、なぜか木製の欄干が付く。一時的に遊歩道化された名残らしいが、踏板もなく結構危険な状態で、現在は当然のごとく立入禁止とされている。
なお一旦途切れたレールは橋梁上から再び復活する。
P
22年9月
この先は大きな左カーブを描き、入間川の河川敷に向かう。しかし路盤内(写真P)は柵で立入が制限される上、雑草、雑木等に邪魔され直接たどることは難しい。上を通過する県道114号線からも、眼下に線路敷を発見することは出来なかった。
Q
22年9月
次にレールが顔を出すのは、河川敷につくられた二輪用オフロードコース、ナショナルパーク川越の北方で、そのまま施設横(写真Q)を通り抜ける。しかしそのレールも雑草に隠される割合が多く、道案内に利用するにはやや心もとない。
R
22年9月
上空に入間川水管橋が迫ると、ほんの少しだけ複線分のレール(写真R)を見つけることができる。これが貨物駅安比奈の入口に相当し、更地となった西側の構内(写真S)はロープで囲まれ、西武鉄道管理地の看板も立てられている。
S
22年9月
なお地形図はここが線路端となっているが、1961年の空中写真では、南方の「いるまがわ大橋」を越えた地点までつながっているように見える。別途、採取軌道が敷設されていたと読み取れるが、安比奈線が直通していたのか等を含めその詳細は不明だ。

参考資料

  1. 知られざる鉄道遺産首都圏/池口英司 著/交通新聞社

参考地形図

1/50000   川越 [S14二部]
1/25000   川越 [S2鉄補]

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制作公開日2022-11/4  *路線図は国土地理院地図に追記して作成* 
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