京阪電気鉄道京津線廃止区間を訪ねて
廃止鉄道ノート関西 減速進行

 地区:京都府京都市  廃止区間:三条~御陵/3.9km  軌間:1435mm/複線  動力:電気

東西と北の三方を山で囲まれた京都。そのひとつ、東山を越え大津まで鉄道を延すには急坂や急曲線との戦いだった。開業後、京都~大津間を結ぶ京津国道や東海道本線の建設によってかなりの線路を移設した歴史を持つが、平成に入り地下鉄の開通と共に相互乗入れを開始、路線が重複する三条~御陵間は廃止された。

略史

大正 1(1912) - 8/ 15  京津電気軌道  開業
14(1925) - 2/ 1  京阪電気鉄道に合併 京津線となる
昭和 8(1933) -    〃  京津線 京津国道建設により線路移設
18(1943) - 10/ 1  京阪神急行電鉄に合併
24(1949) - 12/ 1  京阪電気鉄道として分離独立
平成 9(1997) - 10/ 11    〃  京津線 三条~御陵 当日を以て廃止

路線図


廃線跡現況

三条駅跡
A
21年06月
本線との接続駅でもあり、琵琶湖への入り口ともなっていた三条(写真A)。本線側はすでに地下へと潜り、地上時代の構内は大きな駐車場に変わっている。廃止から20年以上経過したものの、再開発への足取りはまだまだ重いようだ。
なお開業当初の初代駅は三条大橋東詰めの路上に置かれていた。
東山三条駅跡
B
21年06月
駅を出るとすぐ三条通りに乗り入れ、併用軌道で東に向かう。

最初の東山三条(写真B)は、東大路通りを越えた地点に設けられていた。一般的な路面電車での千鳥配置とは異なり、同一箇所で上下線ホームが相対していたが、低床式のため、乗降できたのはステップ付き車両に限られた。
C
21年06月
当初の路線は駅の東から三条通をはずれ、専用軌道で北側を迂回する。分離直後の斜めに取り残された用地が線路跡に相当すると考えられ、今は駐車場(写真C)や民家(写真D)として利用されている。

その後は文教学園の南縁を通り抜けたのち、三谷稲荷付近で白川(写真E)を渡る。しかし軌道跡は既に市街地の中にしっかり溶け込み、旧版地図や当時の市街図を頼りに、おおよその位置を推測するのみだ。

D
93年08月
E
21年11月

神宮道駅跡
F
21年11月
そのまま対岸のマンション内を抜け、平安神宮参道と交差する。この西側あたりに神宮道(写真F)が置かれていた。
岡崎道駅跡
G
21年11月
さらに密集地をしばらく進むと、ルート上に京都らしい細道が現れ、すぐ岡崎通りと交差する。この東側が岡崎道(写真G)となる。老舗京料理店の北隣に相当する。
なお現地で、線路は細道の北側に沿って敷設されていたと聞いた。途中には貨物待避線も備わっていたようだが、今となっては調査の術がない。

ここからは連続した上り勾配を駆け上がり、一旦、三条通を横切る(写真H)。そのまま老舗ホテル内を抜け、再度三条通と並んだ地点で新線側と合流する。同所に設けられていた初代蹴上(写真I)は、ちょうど地下鉄東西線の2番出入口付近と考えられる。

H
21年11月
I
21年11月
初代蹴上駅跡

二代目蹴上駅跡
J
21年06月
三条通は昭和初期に拡幅され、鉄道の運行が可能となったのを機に京津線が道路上に移設された。

併用軌道で進む新線側は二代目蹴上(写真J)まで直行し、旧線にあった各駅は廃止となった。
九条山駅跡
K
21年06月
駅の先で新旧両線が合流した後は専用軌道区間に入り、道路と併走しながら1/15の急こう配に立ち向う。その線路跡は、廃止後早々、道路拡幅用地として利用された。

急坂の終了地点が日ノ岡峠のサミットで、ここに九条山(写真K)が置かれていた。
日ノ岡駅跡
L
21年06月
下り勾配に入ってもしばらくは三条通脇を併走したが、やがて道路内に乗り入れ併用軌道が復活する。ただしこの下り区間の大半は、当初併用軌道として開業し、その後専用軌道に変更されている。いずれにしても、現在は両者とも道路内に取り込まれていることに間違いはない。

その道路上に最初に姿を現すのが日ノ岡(写真L)。交差点角に小さな待合室が設置されていた。
御陵駅跡
M
21年06月
次の御陵(写真M)で道路から南に離脱すると、ここからの線路跡は遊歩道(写真N)に転用され、途中の水路には鉄道時代の石積橋台(写真O)が隠されている。

N
21年06月
O
21年06月

遊歩道の終了地点で三条通を横切り(写真P)、そのまま現在線へとつながる。地下鉄東西線へ乗入れる連絡線脇の側道(写真Q)は、旧線の線路敷を利用してつくられたものだ。

P
21年06月
Q
21年06月

参考資料

  1. 鉄道ピクトリアル通巻627号/鉄道産業遺産を調べよう/吉川文夫 著
  2. 鉄道資料第89・91・92号/京阪・京津初期の資料から/今井健夫 著

参考地形図

1/50000   京都東北部 [S35資修]   京都東南部 [T3部修/S27応修]
1/25000   京都東北部 [T11測図/S29資修/H3修正]   京都東南部 [S6部修/H6部修]

 93年当時の三条~御陵各駅

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制作公開日2021-12/3 
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