有田鉄道を訪ねて
廃止鉄道ノート関西 減速進行

 地区:和歌山県有田川町  区間:海岸〜金屋口9.1km  軌間:1067mm単線  動力:蒸気→内燃

ミカンの産地として昔から有名な紀州地方。栽培の中心は有田川沿いで、有田みかんとして全国に名が通っている。そのミカン搬出を目的として、港を抱える湯浅町で鉄道が計画され、大正初期に開業した。有田港との競争意識も後押ししたと言われている。湯浅町は醤油発祥の地としても知られ、ミカンと醤油が船便で全国に発送されたことになる。ただ紀勢本線が開通すると貨物輸送の流れが一気に変わり、港へつながる路線は廃止された。その後は短い距離で営業を続けたが、晩年は青息吐息の状態で静かにその使命を終えている。なお有田は[ありだ]と発音する。

略史

大正 4(1915) - 5/ 28  有田鉄道  開業
5(1916) - 7/ 1    全通
昭和 19(1944) - 12/ 10    海岸〜藤波 休止
平成 14(2002) - 12/ 31    廃止

路線図



廃線跡現況

A 山田川と大仙堀を仕切る埠頭上(A参照)から、この鉄道のレールが始まる。
湯浅の名産品、醤油を発送するための船着き場があった大仙堀は、当地の重要な観光資源に変わっている。
また鉄道建設にあたり一部が埋め立てられたと言われているが、詳細は調べきれなかった。
16年3月
多くの貨物船に利用された埠頭も、時代の変化と共に山田川の左岸堤防へと用途が変わり、今はその上に二車線道路が延びる。東端の北橋たもとに貨物専用駅として海岸(B参照)が設けられていたが、鉄道と船運との物資受け渡し拠点であったと考えられる。
川沿いを東に進み熊野古道の北栄橋を過ぎると、道路上から道路北脇にルートを移す。
B
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C 道なりにしばらく進むと、道路沿いに簡易裁判所が現われる。ここが湯浅(C参照)の駅跡で、乗客にとっての始発駅となっていた。駅の東で線路跡に沿ったような路地を発見するが、現地で確認を取ることは出来ず、真偽は不明のまま。その先は住宅地に飛び込み、廃線跡のトレースは不可能となる。
北東に進む路線は国道42号線に突き当たり、そのまま合流する。ここは当時の路盤が道路の拡幅に提供されている。その国道が左にカーブを描くと、右側から紀勢本線が接近して並走する。続く右カーブの終了地点に吉川が設置されていた。
16年3月
ここで有田鉄道は国道と離れ、紀勢本線側に並んで進む。先に開業した有田鉄道を、その後延伸してきた紀勢本線が部分廃止に追いやり、さらにその路盤の一部を複線用地として取り込んだ経緯を持つ区間だ。
紀勢本線との接続駅として設置された藤波(D参照)。海岸への路線廃止後の始発駅でもあったが、JR駅の橋上化、駅前の整備等により、その雰囲気はどこにもない。なお駅の南で両線は交差し、有田鉄道は東側に位置を変えていた。
D
16年3月
E ここからは平成に入ってから廃止された区間で、全線が「ポッポみち」と呼ばれる歩行者専用道(E参照)に転換されている。
まずは紀勢本線に沿ってゆるやかにカーブし、すぐ右に分かれると県道22号線を横切る。この手前に置かれていた明王寺は、藤波と入れ替わるように昭和の初めには既に廃止されている。
16年3月
駅の北には小川が流れ、当時の橋梁が残されている。続いて阪和道をアンダーパスすると右急曲線が待ちかまえ、その途中に田殿口(F参照)が設けられていた。
休憩所兼用の公園として整備された駅跡には、ホームと駅舎が残り、大きな駅前広場も廃止時のまま放置されている。
F
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G 道路上を進むと小さく左に曲がって、下津野(G参照)に到着する。やはり休憩所として供用され、ホーム跡も残るが、きれいな石積み擁壁は整備時に積み替えたものと思われる。
駅の東で鳥尾川を渡るが、当時の橋梁(H参照)がそのまま再利用されている。ワンスパンのガーダー桁だが、なぜか川底の中央に橋脚の跡が見え、開業以降に架け替えが実施されたことを読み取れる。続く有田川の小さな支流でも、橋梁(I参照)が同様に再利用されている。
16年3月

H I
16年3月 16年3月

ポッポみちは両側に広がるミカン畑の中を通り抜けるため、当地の特産物であること改めて教えてくれる。
次の御霊(J参照)も長いホームと駅舎がセットで現存し、公園として生まれ変わっている。駅舎内に旅客運賃表が掲示されたままなのは、ご愛敬か。
J
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K 終点金屋口(K参照)の手前に町立の鉄道交流館が開設され、運行時のレール、車両等がそのまま展示、保存されている。
線路が続く駅構内にも車両が保存され、車庫、駅舎、ホーム、本社屋等はほぼ当時の現状をとどめている。
駅前商店は10店舗程あったようだが、休みなのか閉鎖されたのか、営業店舗は少なく、残念ながら駅前の雰囲気を感じ取ることは出来なかった。
16年3月

保存車両

鉄道交流館と金屋口構内に、レールバス(L参照)をはじめ各種車両が保存されている。温暖な地なのにスノーブロウが装着されているのは面白い。 L
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参考資料


参考地形図

1/50000   海南 [S9二修]
1/25000   湯浅

  93年当時の各駅

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制作公開2020-3/16  *路線図は国土地理院電子地図に追記して作成* 
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