雄別炭砿鉄道線を訪ねて
廃止鉄道ノート北海道 減速進行

  地区: 北海道釧路市   軌間:1067mm単線   動力:蒸気→内燃
区間: 釧路〜雄別炭山(本線44.1km)/雄別炭山〜大曲選炭場(大詳内線4.3km)/鶴野〜新富士(鶴野線4.3km)
新富士〜北埠頭(埠頭線2.1km)/他
その名の通り、雄別炭砿で産出される石炭輸送を目的として建設された鉄道。当初から一般の旅客輸送も実施し、また沿線に製紙工場があったため木材の運搬も手掛けた。石炭産出にやや陰りが見え始めた頃、茂尻抗事故の影響で雄別炭砿は突然の廃業に追い込まれ、鉄道側も運命を共にせざるを得なかった。

略史

大正 12(1923) - 1/ 17  北海炭砿鉄道  開業
13(1924) - 3/ 18  雄別炭砿鉄道に改称
昭和 34(1959) - 8/ 31  雄別鉄道として独立
45(1970) - 2/ 12  雄別炭砿に合併
4/ 16     本線、鶴野線廃止、埠頭線を釧路開発埠頭に譲渡
59(1984) - 2/ 1  釧路開発埠頭 埠頭線 廃止

路線図

路線変遷図





廃線跡現況

雄別炭砿鉄道線の始発駅釧路(写真A)は、JR駅の北側に設けられていた。

ホームはすでに撤去されたが、改札口と結ぶ地下通路の階段部分だけ残され、今も線路脇にその姿を見せている。
A
18年6月
B 東に向かって走り出した列車は、すぐ左カーブを描いて根室本線から離れる。線路跡は路地のような生活道から二車線の舗装路へと変わり、左手に川北公園が近づく。新釧路(写真B)の駅跡だ。

道路は駅の先で突き当り、橋梁会社の工場敷地内に入る。以前は鉄道車両の制作も手掛けた会社で、入口近くに当線で使用された蒸気機関車が展示保存されている。
18年6月
工場を抜けるとそのまま国道44号線に合流し、左カーブで向きを西に変える。道路はここで道道へ変わると同時に、雄鉄線通の通称(写真C)が付けられる。当時は鉄道が北側を走り南側の道路と並行していたが、鉄道廃止後に線路用地を取り込んで、現状の四車線道路へと広がっている。

道路上を進むと、中園通とのT字交差点に出る。ここに中園が置かれていた。
C
16年9月
D 鉄道側は新釧路川の手前で道道と別れ、川の先から一車線の生活道として西に向かう。その突き当りに建つコンビニと隣の公民館が昭和の駅跡となり、ここから新富士に向かう支線も分岐していた。

駅の先から線路跡を利用した「湿原の夢ロード」と呼ばれる自転車道が始まり、起点には昭和休憩所(写真D)が設けられている。
16年9月
自転車道は仁々志別川に沿って西進し、すぐに鶴居村営軌道がオーバークロスしていた交差部(写真E)に出るが、既に軌道側の痕跡は消えている。

続いて道道113号線をアンダーパスする。鉄道時代は新富士からの鶴野線が合流する地点で、道道は鶴野線の跡地を利用して建設されている。なおアンダーパス路は、自転車道と道道との平面交差を避けるため後から建設されたもので、鉄道のルートからは若干外れる。
E
16年9月
F 道道を越えた先に位置したのが鶴野(写真F)で、ホーム跡が残され、自転車道の休憩所を兼ねている。

ただ休憩所の表示のみで、駅跡の案内が無いのは残念なところ。
16年9月
駅を出ると再び、鶴居村営軌道が線路上をオーバークロスする。こちらは開業時の旧線区間に相当し、道路脇には跨線橋の橋台跡(写真G)が残されている。

その後は「湿原の夢ロード」どおり、湿原の中を一本道で北西方向に進んでいく。この自転車道、正式には釧路阿寒自転車道の名称で、道道835号線に指定されている。
G
16年9月
H 道路沿いには馬や牛が放牧(写真H)され、北海道らしさを満喫できる快適なサイクリングロードとなっている。

続く北斗は休憩所に利用されるが、鉄道の痕跡は見つけられない。
18年6月
植民軌道仁々志別線の起点になっていた山花(写真I)。ここも以前は休憩所が設けられていたようだが、現在はまったく手入れされずに荒れ放題となっている。

近くの山花公園が代替施設となっているようで、その入り口にはベンチも置かれている。
I
18年6月
J 駅の西方になるが、自転車専用道に一カ所だけ農耕車両と混在する箇所が設定され、大きな注意看板(写真J)が目を引いている。さらに進むと、道東道の建設に伴う迂回路(写真K)へ誘導される。

ここからは一般道が横を並走し、途中には各休憩所までの距離看板(写真L)も立てられている。
18年6月

K L
18年6月 18年6月

やはり休憩所として利用される桜田を過ぎると、自転車道は一般道と別れ再び単独行で進み始める。右に大きなカ−ブを描いた後、左カ−ブで若干方向を戻すと、ゴルフ場の真ん中を通り抜けることとなる。北海道に多い、玉避けネットが不要なパークゴルフだ。

ゴルフ場を過ぎると、今度は右手にスキー場(写真M)が現れる。サイクリングにゴルフにスキーと、まさにスポーツ王国の様相を呈している。
M
18年6月
N 北に向かう道路は、やがて阿寒川に突き当たる。鉄道橋梁は既に撤去され、上流側に新たな橋梁が架けられている。自転車用としてはかなり丈夫そうで、車の通行も考慮に入れて造られているようだ。

橋の先はすぐ阿寒(写真N)となり、「湿原の夢ロード」の終点ともなる。駅舎は中央公園と商工会館の中間点に位置したようで、会館側には雄別鉄道を偲ぶ石碑も建立されている。
18年6月
北に向かう路線は一旦住宅地を抜けたのち、市道阿寒雄別線(写真O)に転換される。最初は二車線だが、町を抜けると一車線となり、北外れの牧場入口を過ぎると重量制限2トン迄の未舗装路(写真P)に変わる。

その後は原野の一本道として続き、たまに牧草地らしき空地も目にしつつ、途中で小川に架かる橋梁(写真Q)を渡る。ガーダー桁は鉄道時代の再利用と思われ、路面には角材が並べられている。ここが重量制限の該当箇所のようだ。
O
18年6月

P Q
18年6月 18年6月

R 古潭集落の手前まで来ると二車線道路と交差し、線路跡も同じく二車線道路に変わる。古潭(写真R)は消防施設に利用され、道道からの取付道路も残されている。

集落のはずれから再び未舗装路に戻り、そのまま国道274号線の下をくぐる。しばらくすると道路が微妙に屈曲する。ここが新雄別(写真S)の駅跡となり、この北方にはガーダーを載せた鉄橋(写真T)を見つけることもできる。
18年6月

新雄別駅跡 S T
18年6月 18年6月

ここから先は道路冠水に阻まれて通行出来ず、真澄町や舌辛川橋梁の確認はあきらめざるを得なかった。

道道に迂回するとベルプナイ川付近で鉄道路盤が接近し、両者で併走を始める。河川上には当時のデッキガーダー(写真U)も姿を見せている。
U
18年6月
V その後、道路沿いでは廃屋となったガソリンスタンドや、炭砿の記念碑が目に留まる。徐々に炭砿と命運を共にした、町の中心に近づきつつあるようだ。

さらに線路跡と道路がその位置を入替えると、左手にコンクリート橋(写真V)が現れる。然別沢橋梁だ。
18年6月
ここで道路が舗装路から未舗装に変わると同時に、鉄道側も雄別炭山に到着する。

現在もホーム跡が残り、奥の長い方が2番ホーム(写真W)、道路脇が3番ホームで、ホーム上のコンクリート残骸は跨線橋跡とのこと。なお隣接する廃墟は駅舎ではなく、住民の生活を支えた購買会の建屋だ。
W
18年6月
X 構内北側には鉄道や鉱山の各施設が置かれていた。大煙突やホッパー跡は容易に探し出せ、抗木用軌道との交差部には今も橋脚(写真X)が立ち並ぶ。
開業当初の雄別鉄道は軌道の下をくぐり抜け、大詳内線として奥地の大曲選炭場まで線路を伸ばしていた。

また下記参考資料1には転車台跡が残るとの記述もあるが、雑草に邪魔されて発見はかなわなかった。
18年6月
この先は線路跡の特定が難しい。道道に隣接していたことは間違いないと思われ、錦沢には道路橋に並ぶ煉瓦造りの鉄道橋(写真Y)が残されている。眼鏡橋と呼ばれたようだが二連ではなく、単独のアーチ橋となっている。

橋の先は鉄道跡が道路に転用された可能性もある。
, Y
18年6月
Z 舌辛川を渡って左急カーブを描いた先が、終点の大曲選炭場(写真Z)となる。設備は道路北側に設けられていたと思われるものの、既に森林と同化してその雰囲気すらなく、場所の特定は難しい。

当時の地図には、この先に炭住集落と共に小学校も描かれるが、昔日の活況を思い描くことは既に不可能と言わざるを得ない。
18年6月

−鶴野線・鳥取側線−

本線の昭和と国鉄根室本線の新富士間を短絡していた、貨物専用の鳥取側線。鉱産品だけではなく、製紙会社の木材輸送にも利用され、鶴居村営軌道との交差部には、大変珍しい乗越式のクロスが用いられていた。

その跡地は大半が市道(写真AA)に転換されている。
AA
16年9月
AB 埠頭線譲受後、貨物列車の本線直通を目的として開通した鶴野線。国鉄線との平面交差を避けるため、跨線橋(写真AB)を設けて乗り越えていた。
こちらの跡地も、多くが道道として再利用されている。

なお最後まで残された埠頭線は、釧路開発埠頭に譲渡されてしばらく活躍を続けたものの、昭和後期にその役目を終えた。
18年6月

 

−保存車両−

釧路製作所の工場敷地内にSL(写真AC)が保存され、新釧路の駅名標も添えられている。
また阿寒の「炭砿と鉄道館」にも、SLと共に各種資料が展示保存されている。
AC
16年9月

参考資料

  1. 雄別炭礦遺産探訪鉄道編/雄別の歴史研究会
  2. 鉄道ピクトリアル通巻407号/雄別鉄道/安田一栄 著・・・1981年当時の廃止跡を紹介

参考地形図

1/50000   釧路 [S30測量]   大楽毛 [S36修正]   阿寒 [S34資修]   徹別 [S3鉄補]
1/25000   釧路   釧路港 [S33測量]   遠矢 [S43修正]   大楽毛 [S33測量]   山花 [S43修正]
  阿寒 [S43修正]   上庶路   布伏内

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制作公開日2018-9/6 
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