渡島海岸鉄道を訪ねて
廃止鉄道ノート北海道 減速進行

 地区:北海道森町  区間:森~砂原/9.6km  軌間:1067mm/単線  動力:蒸気・内燃

函館本線が北海道駒ヶ岳の西を通過したため、鉄道から取り残されてしまった内浦湾沿岸地域。同線に接続すべく大沼からは大沼電鉄が、森からは渡島海岸鉄道が始動した。やがて省線側が勾配緩和を目的とした砂原支線を計画し、ルートの重なる大沼側は廃止、渡島側は国有化され、その幕を閉じた。当初は全線を支線に転用する予定だったが、結果的には西側の半分弱が利用されたに過ぎない。

略史

昭和 2(1927) - 12/ 25  渡島海岸鉄道 開業
3(1928) - 9/ 13     全通
昭和 20(1945) - 1/ 25      国有化

路線図



廃線跡現況

A
25年9月
函館本線に接続していた起点の(写真A)。3番線の北側に専用ホームを構え、新設した48尺+30尺の跨線橋で省線駅舎と結んだ。また構内北側は直接内浦湾に接するため、開業に合わせ大掛かりな護岸工事を実施するも、その後、幾度も修復工事を繰り返す、要注意個所でもあった。
B
25年9月
駅を出、現在は放棄された引込線上を東へ向かい、海岸線と離れた直後が新川(写真B)となる。ガソリンカー導入後、その機動性を生かして追加された駅で、地形図に載らないため起点から0.7kmとされる距離程を計測し、道道1028号線との踏切前後と判断した。
C
25年9月
森駅への乗り入れに手間取り、暫定の始発駅として開業した仮東森(写真C)。旧版地形図と45鎖25節(910m)の距離程を頼りに探すものの、線路脇にすら近づけず、駅跡らしき面影はどこにも見つからない。同駅の東を流れる茅部中川を渡ると、函館本線は大沼回りと砂原回りに分かれる。渡島海岸鉄道の路盤を引き継いだのが後者で、分岐後の左カーブでやや北に向きを振る。
D
25年9月
カーブ終了地点に置かれていたのが、現在駅と同一地点の東森(写真D)となる。昭和9年の後発ながら、その後、車庫等を備えた一大拠点に発展した。同駅からは日本冷凍食品事業発祥之地とされる食品工場への構外側線が延び、冷凍製品の輸送にも関わったようだ。駅の設置と側線の延伸が同時期に行われたことから、工場のためにつくられた駅とも考えられる。
E
25年9月
次の尾白内(写真E)も国有化後に同名駅が設けられた。ただ場所が若干移動し、1哩75鎖(3118m)とされる渡島時代の地点には、北の道道からつながる当時の駅前道路が未舗装路として残されるのみだ。
F
25年9月
さらに現尾白内駅を過ぎたところ(写真F)で、渡島側はJR線から北に離れていく。徐々に高度を上げることが必要なJR側は、平地を走る路盤の再用には至らず、この先を新ルートで建設した。分岐直後は藪地等に痕跡を消されるが、その先で一部雑草地となった線路跡(写真G)が顔を出す。さらに隣接する藪地を抜けたのち、やや東方のルート上にも再び未舗装路が現れ、同所が4.1kmの尾白内学校裏(写真H)に一致する。動力変更に伴って追加された駅の一群だ。

G
25年9月
H
25年9月

I
25年9月
駅の先、線路跡(写真I)は舗装路に転換され、地元の生活道として利用され始める。一直線で進む道路上に置かれた押出(写真J)は、やはり追加された駅の一群に含まれ、起点からの距離程は5.0kmと記される。しかし廃止からの経時によるものか、道路化によるものか、駅らしき雰囲気はどこにも残されていない。
その後、道路は国道278号線(写真K)に合流し、ここからの国道が以西の転用道路を引き継ぐことになる。

J
25年9月
K
25年9月

L
25年9月
しばらく直線で続いた国道が緩やな右カーブを描いたのち、現JR掛潤駅につながる細道と交差する。同所が距離程3哩75鎖(6337m)の掛潤(写真L)に相当し、地形図にも描かれる。さらに道路上には東掛潤(写真M)度抗崎(写真N)と短距離で続くも、相変わらず駅を示す目印は何も発見できない。それぞれ7111m 、8.1kmとされ、前者が昭和13年、最後に追加された駅となる。

M
25年9月
N
25年9月

O
25年9月
海岸沿いを東西に広がる漁業の町、砂原集落の中央付近に置かれたのが終点の砂原(写真O)。当然ながら、海産物の輸送に力を入れていたことは想像に難くない。また東に向かって路線を延伸する計画も立てられたが、これは国有化以前に断念している。

参考資料

  1. 鉄道軌道補助資料綴4/北海道立図書館
  2. 第一門・監督・第一種・二、地方鉄道・イ、免許・渡島海岸鉄道・昭和七年~昭和十三年 他/国立公文書館

参考地形図

1/50000   駒ヶ岳 [S20部修]
1/25000   渡島森 [該当無]   砂原 [該当無]

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制作公開日2025-10/16  *路線図は国土地理院電子地図に追記して作成* 
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